①音程可視化ソフトウェアの活用による音程再現の未熟さに基づく調子はずれ抑制への効果- 米田 巖根
音程のズレはカラオケのバーなどの視覚情報によってある程度補正できる
②独立した音楽と映像に対する印象評価と音楽動画の印象の関係性に関する研究
音楽と静止画では音楽が、音楽と映像では映像から受ける影響が大きい。
500件の音楽動画のサビ部分に対し, 「音楽 「動画」 「音楽のみ」 「映像のみ」 の3タイプのメディアに分離したものに対して印象評価データセットを作成し, 分析 を行った。 また, 音楽と映像を任意に組み合わせた音楽動 画を作成し, それに対する印象変化データセットもあわせ て構築した. またそれについて, 音楽の印象、映像の印象 と音楽動画の印象の関わり方について可視化ならびに分析 を行った. その結果, 音楽動画全体とサビ部分では受ける印象が大 きく食い違うこと, また音楽の印象と映像の印象を組み合 わせることで音楽動画の印象推定ができる可能性があることを明らかにした. また, 音楽のみでの印象と音楽動画の 印象、映像のみの印象と音楽動画の印象はそれぞれの印象 軸ごとに異なった相関がある傾向を明らかにした.
音楽動画を制作する際には, 音楽に重点を置くことで印象を伝えるのが容易になる.音楽動画では,音楽と映像が同程度に影響を及ぼしている.その一方で, 印象ごとに影 響の仕方が変わっている。 切ない,滑稽な,かわいい では, 映像 の印象評価値が正の値の場合,印象評価値が高評価になっ ている音楽動画の件数が多くなって いる.また,堂々や元気が出るでは音楽の印象評価が高く, 映像の印象評価が低くても音 楽動画での印象評価が高評価になっているものが多い. 堂々), 元気が出るは音楽に影響を受 けやすい印象である.このように, 各印象軸 で違った影響の受け方をしている.
③音楽と感情 – 大串健吾
ヴァイオリン, フルート等の 楽器の演奏を聴取することによって、 演奏者の意図する 特定の感情がどの程度聴取者に伝わるかについての実験を 行った。演奏者は男性のプロの演奏家である. 演奏者は与えられた 曲を「喜び」「悲しみ」「怒り」「やさしさ」「荘重さ」「無表情」の6つの感情を伝えるように弾き分けることを指 示された。聴取者 それぞれの演奏に6つの感情の要素がどの程度含まれ ているかを, 0~10点の範囲で評定した. その結果によれ ば、最も感情が良く伝わったのは, 「無表情」, ついで 「悲 しみ」 であった. 「喜び」 は中程度で,「怒り」 や 「荘重さ」 は,評点がやや低かった. ただし, ヴァイオリン演奏とフルート演奏に対する評点はかなり異なっていた. 楽器の違いと いうよりも演奏者の個性の影響が大きいようである. また
「悲しみ」 と 「やさしさ」 はしばしば混同され、この二つは類似性があ ることを示している. たしかに両者の演奏の音響的特徴を 比べてみると, テンポが遅い,テンポの変動が比較的小さい,音が比較的小さい, (付点音符のような) 長い音 符と短い音符のコントラストが大きい,レガート的演奏, 音の立ち上がりが遅い などの特徴が共通しているこれに対して, 「喜び」の演奏は, テンポが速い, テンポの変動は中程度, 音の大きさは中から大, 長い音符と短い音符のコントラストが大きい, 音の立ち上がり が速い,音色が明るい, などと 悲しみ」 や 「やさしさ」とはほぼ反対であった
「怒り」については、テンポが速い, 音の大きさは大, 長い音符と短い音符のコントラストが大きい, ノンレガート的演奏, 音の立ち上がりが速い, 粗い音色などの特徴があった. 「荘重さ」 の特徴は 中程度あるいは遅いテンポ, テン ポの変動が比較的小さい, 音の大きさは中から大, 音 の立ち上がりは速いことが多いなどであった. 最後に 「無表情」 の特徴は, 中程度のテンポ, 音の大きさは中程度 で、 最後のリタルダンド (テンポを遅くする) もなく、ヴィブラートもなかった
④井手口健,熊田信義,永野秀和:印象強調を目的とした音楽聴取時の振動付与方法の検討
楽の種類,振 動付与体の種類,振動させる楽器の種類を変えて,音楽聴取に併せて掌に振動を付与する主観評価実験を行い,振 動付与の有効性に結びつく印象強調の種類および振動付与方法の抽出を行った.その結果,「迫力が出た,乗 りがよくなった,臨場感が出た,快くなった」などの印象変化が振動付与の有効性の要因とな ることがわかった.さらに,これらの有効な印象強調はリズミカルな楽曲と静かで穏やかな楽曲の両方で得られ,リズミカルな楽曲ではリズムを与える楽器からの振動抽出により「迫力」,「乗り」,「臨場感」,「快さ」が強調され,静かで穏やかな楽曲は伸びやかで連続的な音を呈する楽器か らの振動抽出により「迫力」,「臨場感」が得られるようである.ただし,その場合も必ずしもその楽曲が有している印象が強調されているとは限らず,振 動付与によって上記の印象が新たに強調されて効果が出ているケースがあることがわかった.
⑤古賀広昭,永野留美子,清田公保,下塩義文,小山善文:触覚フィードバックを用いた音声ピッチ制御方式による盲ろう者の歌唱訓練
触覚フィードバックによる音声ピッチ制御システムを用いて盲ろう者による歌唱訓練を4 回実施した。課題曲のピッチ差を指標として音程の正確さを評価した結果、学習効果は認められなかったが,回数を重ねる毎にピッチ差が安定してくることが確認された.カエルの歌のように比較的音程が連続して変化している課題曲において、盲ろう者が成人健聴者・健聴幼児と同程度の正確さを持って歌唱可能であることが示された